働き方改革 パワハラ

▼パワハラを「出来事」に追加 労災認定見直しへ――厚労省
防止対策の法制化考慮
 厚生労働省は、精神障害に対する労災認定基準の見直しに着手した。令和元年6月にパワーハラスメント対策が法制化されたため、パワハラに基づく労災認定のあり方を検討する。現在、労災認定に用いている「業務による心理的負荷評価表」に新たにパワハラによる「出来事」を追加して、影響度などを決定していく。2年度に実施する出来事とストレス度に関する調査結果なども考慮し、3年度以降に認定基準の改定をめざす。
 業務による心理的負荷を原因とする精神障害については、平成23年12月に厚労省が作成した「心理的負荷による精神障害の認定基準」(基発1226第1号平23・12・26)に沿って労災認定を行っている。精神障害に係る労災請求件数は、平成30年度に1820件に達し、6年連続で過去最多を更新し、今後も増加が見込まれている。令和元年6月にはパワハラ防止対策が法制化され、情勢も変化している。
 このため厚労省は、臨床精神医学者や労災保険法などに精通した専門家で構成する「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」(黒木宣夫座長)を設置、パワハラ対策の法制化を踏まえた認定基準および精神障害に関する最新の医学的知見を踏まえた見直しを進めるとした。「心理的負荷による精神障害の認定基準」によると、疾病の発病に明確な医学的判断があることに加え、発病の前おおむね6カ月の間に業務による強い心理的負荷が認められることが労災認定の要件となっている。
 心理的負荷は、同認定基準別表「業務による心理的負荷評価表」に基づき、「具体的出来事」ごとに、強度を「強」「中」「弱」の3段階で決定している。
 「具体的出来事」では、現在、パワハラに最も近いものとして、「嫌がらせ、いじめ、暴行」や「上司とのトラブル」を設定している。「嫌がらせ、いじめ、暴行」では、部下に対する上司の言動が業務指導の範囲を逸脱し、人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ執拗に行われた場合などにおいて、心理的負荷を「強」としている。
 「具体的出来事」別の精神障害支給決定件数をみると、「嫌がらせ、いじめ、暴行」は、平成30年度で69件となり、精神障害の支給決定件数全体の約15%を占めているのが実態。
 しかし、パワハラは「嫌がらせ、いじめ、暴行」とは、異質な面があるとの見方から、「具体的出来事」に項目を追加し、新たにパワハラの定義や強度を検討する意向である。パワハラ防止というより、労働者の救済に配慮した見直しとなる。
 厚労省では、ストレス度に関する調査を2年度中に実施し、その結果を参考としながら、翌3年度以降に認定基準の改定を図る予定である。