継続雇用制度 高齢者積極活用めざせ 従来型は再考が必要に
賃金減額が意欲削ぐ
現在、8割超の企業は高年齢者雇用安定法が求める選択肢のなかで定年廃止や65歳以上への定年延長ではなく、上限を65歳以上(65歳も可)とした継続雇用制度導入を選択している。企業にとって負担が一番軽いと考えてのことである。
圧倒的多数の企業で実際に行われている継続雇用とは以下のような特徴を持つ。
・年金支給開始年齢までの制度
・希望者全員が対象
・1年更新
・それまでの仕事を継続
・役職は離脱
・賃金は定年前より大きく減少
・フルタイム勤務が前提
・人事考課実施企業は約半数
企業にとってはこの形での継続雇用は法律に則ったものであり、一方で再雇用される高齢者の賃金は定年前の年功賃金とは別体系ながら、従来とほぼ変わらぬ仕事をしてもらえるというメリットがある。とはいえ良いことづくめではない。本来は定年で雇用関係を解消したかった者まで抱え込むこともある。残業をあまり求めることができないなど高齢者を活用しづらい部分もある。
働く側の高齢者にとってもメリットとデメリットがある。60歳定年後は年金支給開始まで数年を待たねばならないが、継続雇用はその間の貴重な収入源で生活保障になる。 しかしながら賃金が低くなることで「今までと仕事の内容は変わらないのに大きく収入が減った」と落胆することもある。役職から離れれば年下の上司の下で働くことになって人間関係にも苦労する。人事考課がなければがんばってもがんばらなくても収入は同じであり、がんばる高齢者ほど意欲が阻害される。
慢性的に人手不足の中小企業では継続雇用制度が効果を発揮しているようであるが、大企業ではそうであるとはいい難い。そもそも企業の側に高齢者を積極的に活用して戦力にしようとの熱意があるようには思えない。法律で求められているからとりあえず最小限の負担で済まそうとしている企業が多いのではなかろうか。政府が「70歳までの就業機会確保」を推進している現在、従来型の継続雇用は再考を求められよう。
10月 2019のアーカイブ
社会保険 随時改定
1.『随時改定で端数処理は 定期代3カ月分へ変更』
Q.当社では、定期代の支給方法を1カ月単位から3カ月単位に変更しました。随時改定の対象者が出たため、月当たりの額を出すと円未満の端数が出ます。どのように処理すべきでしょうか。
A.総支給額割り振る
3カ月または6カ月ごとに支給される通勤手当は「報酬」となり、月額に換算して報酬に含めます。日本年金機構疑義照会では、以下のように取り扱うとしています。まとめて支給された手当等を月数で除し各月の報酬に算入する場合、原則は、切り捨てます。
ただし、定時決定、随時改定において3カ月間に受けた報酬の総額自体を使用する必要がある場合には、総額が変動してしまうと等級に影響を及ぼす可能性があります。この場合には、端数を「原則支給月に算入」するとしています。
3カ月の定期代1万円が支給された例では、すべての月を切り捨てると9999円になってしまうため、支給月を3334円、その他の月を3333円として調整しています。6カ月定期代を支給して、期間が定時決定の基礎となる4月以降の一部を含むときには、切捨てという例も示されています。随時 改定があった場合も同様でしょう。
無期契約転換
積極的に無期契約転換を
KLMオランダ航空の客室乗務員3人が労働契約法第18条に基づき同社に無期雇用契約への転換を申し込んだところ、拒否されて雇止めとなる事件が発生した。東京地裁は、これを同法違反とみなし無期転換を命じたという。同社は、最近になっても客室乗務員を次々に雇止めし、この結果、29人の労働者が撤回を求める訴訟を起こしている。
民事上の規範として「無期転換ルール」が定められた以上、これに従わないと法違反のブラック企業と烙印を押されてしまう。社内訓練は契約期間に入らないとの同社の主張も通用しない理屈である。
有期契約労働者の雇用安定と処遇アップおよび人材の有効活用は、一企業の枠に留まらず社会全体にとっての重要な課題となっている。使用者は、無期転換ルールの適用回避を画策するのではなく、積極的に有期契約労働者の雇用安定をめざす方向に意識転換してもらいたい。
KLMオランダ航空事件では、就業前に9週間の訓練を実施した後、3年間の有期労働契約、その後2年間の契約更新をしたため、訓練期間を通算して契約期間5年が経過。このため客室乗務員が無期転換を申し入れたが、同社は「訓練は労働契約期間に通算しない」と主張し、無期転換に応じず雇止めとした。
客室業務に不可欠な訓練期間であればどう考えても実質上労働の一環であり、労働契約期間内との解釈を免れることはできない。訓練を受けなければ業務に支障が生じる可能性があり、就労の前提条件となっていることは明らか。
同社に限らず使用者としては、無期転換ルールの適用回避を無駄に画策すべきではない。短期の有期契約に基づく不安定雇用の縮小は、いまや社会的要請である。5年近く長期間就労し、一定程度戦力化している労働者をそのまま無期転換しても支障とならないばかりか、人手不足を考慮すると必要な取組みといえるだろう。
今後、無期転換拒否と雇止めに対する裁判所の判決が増加すると見込まれるが、多くが使用者に厳しい判断となるかもしれない。
4割で違法残業発覚 長時間労働事業場へ監督――厚労省
長時間労働が疑われる事業場に対する平成30年度の監督指導結果を公表します
厚生労働省では、このたび、平成30年度に、長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した、監督指導の結果を取りまとめましたので公表します。
この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としています。
対象となった29,097事業場のうち、11,766事業場(40.4%)で違法な時間外労働を確認したため、是正・改善に向けた指導を行いました。なお、このうち実際に1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は、7,857事業場(違法な時間外労働があったもののうち66.8%)でした。
厚生労働省では、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行います。
【平成30年4月から平成31年3月までの監督指導結果のポイント】
(1) 監督指導の実施事業場:29,097事業場
このうち、20,244事業場(全体の69.6%)で労働基準関係法令違反あり。
(2) 主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]
① 違法な時間外労働があったもの:11,766事業場(40.4%)
うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
月80時間を超えるもの: 7,857事業場(66.8%)
うち、月100時間を超えるもの: 5,210事業場(44.3%)
うち、月150時間を超えるもの: 1,158事業場( 9.8%)
うち、月200時間を超えるもの: 219事業場( 1.9%)
② 賃金不払残業があったもの:1,874事業場(6.4%)
③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:3,510事業場(12.1%)
(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]
① 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:20,526事業場(70.5%)うち、時間外・休日労働を月80時間※以内に削減するよう指導したもの: 11,632事業場(56.7%)
※ 脳・心臓疾患の発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとの医学的知見があるため。
② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,752事業場(16.3%)
働き方改革 健康診断
『健診2回実施するか? 雇入後に「定期」の時期』
Q.当社の定期健康診断のスケジュールは、毎年秋ごろです。このたび、中途採用した正社員ですが、雇入時と定期健診の関係はどのようになるでしょうか。両方とも実施ということになるのでしょうか。
A.雇入時を行い省略
雇入時健康診断は、入社後の適正配置や健康管理の資料として役立てることが目的の健康診断です。そのため、入社後すぐに定期健診をするからといって、雇入時健診を省略することはできません。なお、雇入前3カ月以内に健診を受け、その結果を証明する書面を提出したときは、その健診と同じ項目については、雇入時健診を省略することができます。
一方、雇入時健診を実施してから、1年以内に実施される定期健診は、省略することができます。雇入時健診を実施して、定期健診を省略する流れです。両者の健診項目を条文上で比較すると、「かくたん検査」の有無が相違していますが、健診項目の省略基準が定められていて、X線検査で異常のない者等について、医師の判断で省略が可能とされています。