1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制(労基法32条の4)は、1カ月を超え1年以内の期間を平均し週40時間を超えないことを条件に、業務の繁閑に応じ労働時間を配分することを認める制度です。1年間を通じて採用することもできれば、1年間の一定期間の時期のみ適用することも可能です。同制度を採用するためには、労使協定で、労働日、労働日ごとの労働時間を特定することなどが求められます。
 割増賃金が必要になるのは、1カ月単位の変形労働時間制と同様に次のとおりです(平6・1・4基発1号、平9・3・25基発195号)。
① 1日の所定労働時間を8時間超としている日はその時間、それ以外は8時間を超えた時間
② 1週の所定労働時間を40時間超としている週はその時間、それ以外は40時間を超えた時間(①の時間を除く)
③ 変形期間の法定枠を超えた時間(①②の時間を除く)

1日7時間と定めた日に1時間残業させても、①の8時間を超えないため割増賃金は不要となります。実際は、簡便にあらかじめ設定した日々の所定労働時間を超える時間に割増賃金を支払う企業は少なくないようです。
 労基法に基づき割増賃金が必要となるのは、前記①、②、③の時間を足した部分の時間です。したがって、①②は毎月、③は対象期間終了ごとに、支払期日が到来することになると解されています。
 ③の変形期間だけを考えて時間外労働を算定すると、仮に変形期間全体でみた場合には法定労働時間内であっても、1日または1週間でみた場合には時間外労働として扱う部分が出てくる可能性があります。対象期間だけではなく、1日、1週間についても時間外労働に該当するか否かを確認する必要があります。