厚生労働省は令和2年度、中小企業における高年齢労働者の安全・健康対策を支援する助成金を新設する方針である。高年齢者が個々の特性に応じた能力を発揮し、安心して活躍できる環境を整備する考え。調査によれば、65歳以上の従業員の雇用確保に向け国に求める支援として、約53%の企業が「人件費等の経費援助」を挙げている。厚労省が今後まとめるガイドラインに沿った取組みを実施する企業に最大100万円を助成する予定とした。
わが国においては、少子・高齢化が進展する一方で、高年齢者雇用安定法により高年齢者の雇用確保措置が義務付けられていることから、労働者の高年齢化が一層進むとみられる。このため、「経済財政運営と改革の基本方針2019」(令和元年6月21日閣議決定)では、とくにサービス業で増加している高年齢労働者の労働災害防止のための取組みを強化する方針を打ち出している。
厚労省では同閣議決定などを受けて、令和2年度に高年齢労働者の安全・健康確保対策を積極化させる企業に対する支援策として、助成金を新設する方針を明らかにした。安全・健康確保対策に関するハード・ソフト両面の支援に加え、先進的取組みに対する奨励を行う意向である。
厚労省の「労働者死傷病報告」によると、小売業、社会福祉施設、飲食店などの第三次産業(サービス業)が占める割合が過去10年間で7ポイント(40%⇒47%)増加し、死傷災害全体の約半数に達している。
年齢別では、60歳以上の高年齢労働者が被災する割合が、過去10年間で8ポイント(18%⇒26%)増加し、死傷災害全体の約4分の1を占めた。「50歳以上」に年齢を下げると、全体の半数を超えている。
新設する助成金では、サービス業で働く高年齢労働者に多い転倒災害などの防止のために、滑りにくい床や手すりの設置などを行った中小企業に対して経費の2分の1、1件当たり100万円を上限に支給する見込み。
健康確保に関しては、高血圧対策の充実に向けた管理強化や要員確保、さらに介護分野などで問題となっている腰痛対策としての「ノーリフト」機器の導入に対して助成する。安全対策確立のための先進的研究や検証に取り組む大手企業なども助成対象とする方針だ。
厚労省では現在、高年齢労働者の特性に配慮した効果的な安全衛生教育のあり方、労働災害防止に向けた安全対策および健康確保対策について、改めて専門的検討をスタートさせている。12月までに検討結果をガイドラインとしてまとめる。