~雇用との違いを正しく理解し、トラブルを未然に防ぐ~
こんにちは。椎名社会保険労務士事務所です。
近年、医療・介護・IT業界をはじめ、さまざまな分野で「フリーランス(業務委託契約)」という働き方が増えています。歯科医院などでも「助っ人衛生士」や「スポット勤務」のような形で、個人事業主として働く方を受け入れるケースが見られるようになりました。
しかし、フリーランス契約と雇用契約の違いを曖昧にしたまま契約・運用してしまうと、法的なリスクやトラブルの原因となります。
今回は、フリーランスとの契約にあたって企業が特に注意すべきポイントをご紹介します。
1.フリーランスと雇用契約の違いとは?
フリーランスとは、企業に雇用されずに仕事を請け負う個人事業主です。
以下は、雇用契約との主な違いです。
項目 フリーランス(業務委託) 雇用契約(労働者)
指揮命令 受けない 受ける
勤務時間・場所 自由に設定・合意 会社が指定
仕事の断り 原則自由 拒否しづらい
報酬 成果に応じた報酬 時間や日数に応じた給与
社会保険 原則加入なし 条件を満たせば加入義務あり
労災保険 特別加入制度あり 使用者が必ず加入
実態が「労働者」であるにもかかわらず、形式だけフリーランス契約とするのは「偽装請負」とみなされ、労基署から是正指導を受けるリスクがあります。
2.フリーランス契約時の注意点
❶ 契約書を必ず取り交わす
業務委託契約書を作成し、以下を明記しておくことが重要です。
業務内容と範囲
業務時間や場所の自由度
報酬の金額・支払方法
契約期間と更新有無
秘密保持や損害賠償に関する取り決め
▶ 曖昧な合意のまま業務を開始すると、後から「指示されていた」「労働者と同じ働き方をしていた」と主張され、雇用とみなされる危険があります。
❷ 指揮命令を出さない運用を徹底する
勤務日や時間を指定しない
業務の具体的な指示や指導を行わない
勤怠管理や遅刻・早退の報告義務を課さない
▶ 実態として「会社の指示に従って働いている」場合は、フリーランスではなく労働者と判断される可能性があります。
❸ 労災事故への備え
業務中にけがや事故が発生した場合、フリーランスは通常の労災保険の適用を受けられません。
ただし、労災保険の特別加入制度を活用することで一定の保障を受けられます。
▶ フリーランスと契約する際には、特別加入の有無や保険対応の確認を忘れずに。
3.実態が「雇用」に近い場合は、雇用契約に切り替えを
以下のような運用をしている場合は、実態として雇用関係に該当する可能性が高くなります。
勤務時間や日数を医院側が決めている
院長や上司の指示に従って働いている
医院の制服・備品を使っている
他のスタッフとシフトを組んで連携している
このような場合は、形式上フリーランスでも、実態としては労働者であるとみなされる可能性があり、雇用保険や労災保険、残業代などがさかのぼって請求されることもあります。
まとめ|正しい契約でトラブルを防ぐ
フリーランス契約は、柔軟な働き方の一つとして有効ですが、
契約の内容と実態が一致しているかを常に確認することが重要です。
椎名社会保険労務士事務所では、
契約形態の適正判断
業務委託契約書の作成支援
社会保険・労務管理のアドバイス
など、企業様の状況に応じたサポートを行っています。
「この働き方はフリーランスで良いのか?」「契約書に不備はないか?」など、ご不明な点があればぜひお気軽にご相談ください。