企業経営において、従業員が会社の指示に従わない場面は時として発生します。上司の業務命令を無視したり、会社の方針に反発したりする行為は、組織の秩序や生産性に大きな影響を及ぼしかねません。
今回は、そうした「指示に従わない従業員」への対応について、法的視点と職場改善の観点から解説いたします。
■ まずは事実確認と対話から
従業員が指示に従わない場合、いきなり処分を検討するのではなく、「なぜ従わないのか」を冷静に確認することが重要です。
指示の内容が不明確だった
指示の目的に納得していなかった
健康状態やプライベートの事情が影響していた
こうした背景がある場合も多く、一方的な判断は逆効果です。上司と本人との面談を実施し、対話による信頼回復を図ることが第一歩です。
■ 明確な就業規則と指示命令の基準を整える
従業員に業務命令を出す際は、「職務内容が契約や就業規則に基づいているか」を確認しましょう。
業務命令の正当性が不明確な場合、従業員に拒否されるリスクもあります。
また、「指示に従わない場合は懲戒処分の対象となる」旨を就業規則に明示しておくことが、抑止力にもつながります。
椎名社会保険労務士事務所では、企業様の実態に応じた就業規則の整備もご支援しています。
■ 注意・指導記録の蓄積がカギ
指示違反が繰り返されるような場合、次のような対応が必要です。
口頭での注意
書面での指導(指導書・始末書)
改善指導の記録(面談記録など)
これらを段階的に行い、記録として残すことが、将来的に懲戒処分を行う際の根拠となります。
感情的な対応ではなく、「事実と記録」に基づく冷静な対応が信頼される職場運営の鍵です。
■ 正当な業務命令であれば「拒否」は懲戒対象に
法律上、会社が正当な業務命令を出したにもかかわらず、従業員が正当な理由なくこれに従わない場合、「業務命令違反」として懲戒処分の対象になり得ます。
ただし、その処分の重さは、行為の悪質性・継続性・業務への影響度などを総合的に判断して決定すべきです。
■ 最終的には「信頼関係の修復」がゴール
重要なのは、処分することではなく、「信頼関係の修復と再発防止」です。
会社の理念や方針を丁寧に説明し、従業員の理解と納得を得る努力も忘れてはなりません。
上司や管理職にとっては、指導力・説明力・人間力が試される場面とも言えます。
■ 椎名社会保険労務士事務所からのご提案
当事務所では、指導に悩む管理職の皆様向けに、「労務トラブル未然防止研修」や「管理職のための指導力アップ研修」などもご提供しています。
また、指導記録や注意書式などのテンプレート提供、懲戒処分の可否に関するご相談も随時承っております。
困ったときは、ぜひお気軽にご相談ください。
職場の秩序と信頼関係を守ることは、企業の未来を守ること。
社員一人ひとりの行動に真摯に向き合い、組織全体でより良い職場を築いていきましょう。