36協定の労働時間上限設定か

厚生労働省で「第6回仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」が開催されました。検討会では、36協定による労働時間の上限を定めるべきかが議論されています。
従来、36協定では時間外労働に関する限度時間である1か月45時間、年360時間以内で協定している会社が多いが、その時間を超えて特別条項付協定を締結し1か月100時間超の会社もある。そこで長時間労働の歯止めとして十分機能していない36協定の上限を設定しようということが議論されています。

仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会(論点の整理案)
長時間労働の是正は、働く方の健康を確保するとともに、仕事と家庭の両立や女性の活躍促進等を推進するための重要な課題である。人口が減る中で我が国の成長を確保していくためには、育児等で制約のある方も含め、誰もが働きやすい環境を整備することが必要であり、そのためには、効率的でムダのない働き方をすることにより、出来る限り不本意な時間外労働を少なくしていくことが必要である。
長時間労働は、我が国の企業文化や人事制度、下請構造や取引環境の問題など、日本の産業・雇用システムの全体構造から発生しており、その改善に向けて、様々な施策を総動員して取り組むべきである。
まずもって、長時間労働を前提とする企業文化を変え、企業の業務プロセスの見直しや意識改革を進めることが必要である。経営者が時間当たり生産性を意識して改革に取り組むことは、結果的に生産性の向上にも資すると考える。 その上で、同業他社等との競争が厳しい中、各企業の自主的な取組に任せるだけでは限界があることから、36協定における時間外労働規制の在り方について、法改正を検討する必要がある。
その際、新たな価値の創造や社会の活力を削ぐことがないよう留意するとともに、働く人の中には「仕事をやりきりたい」という気持ちもあることから、働く人の意欲と能力が十分に発揮されるようにすることが必要である。

時間外労働の限度
36協定の締結状況を見ると、通常の延長時間はほぼ100%の企業で限度基準告示(月45時間、年360時間等)の範囲内に収まっている一方で、一部ではあるが、特別条項がある場合の延長時間が月100時間を超えるものも見受けられ、長時間労働の歯止めとして十分機能していない。
36協定の時間外労働規制のあり方を検討するに当たっては、労使協定で定める範囲内で、割増賃金を払えば上限なく時間外労働が可能となる現在の仕組みを改め、一定期間内の総労働時間の枠を定め、その枠の中で健康を確保しつつ効率的に働くことを可能とする制度への転換を指向すべきである。
たとえば1日や1週などの短い期間を単位に労働時間の上限を規制すると、業務の繁閑や働く人のニーズに対応した労働時間の設定が困難になることに留意が必要である。他方で、短期間に過度に時間外労働が集中して健康を損なうことがないようにするための配慮も必要である。
この他、睡眠時間の確保や疲労蓄積を防ぐ観点からは、1日単位の休息期間を確保するインターバル規制も重要な考え方であり、企業自らがこれを導入することを促していくべきである。
一方、長時間労働が避けられない業種・職種には、業務の特性や取引慣行等それぞれの課題があり、法的な上限規制だけでは解決しない。したがって、こうした業種・職種については一定の配慮をしつつ、計画的な労働時間の見直しを進めることが必要である。
また、生産性の問題を考えると、企業の競争力の発揮と両立できる仕組みとし、我が国経済社会の発展に必要なイノベーションが産まれ、現場の創意工夫が活かされやすい環境を確保することも必要である。