厚生労働省が通常国会に提出していた労働関係法改正案が、3月末までに原案通り成立した。労働基準法改正案と雇用保険法等改正案の2本で、前者は賃金請求権の消滅時効の5年への延長(当分の間3年)、後者は65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置の努力義務化を規定した。労基法改正に対する附帯決議では、労働基準監督署による指導・監督を徹底し、賃金未払い事案に対する是正指導を厳正に行うことが重要と指摘。雇用保険法等改正については、高年齢者就業確保措置を講ずる場合、個々の労働者の意思を十分尊重するよう求めている。
4月1日に施行した改正民法では、使用人の給料などに係る短期消滅時効を廃止し、原則5年に変更した。労基法における賃金請求権の消滅時効期間(現行2年)についても見直しを行い、改正民法と同様に原則5年に延長(令和2年4月1日施行)。同時に、消滅時効の起算点について、法律上、権利行使できるようになった時点の「客観的起算点」(賃金支払日)であることを明確化している。
賃金台帳などの記録の保存期間と割増賃金未払いなどに係る付加金の請求期間は、同様に原則5年に延長となっている。ただし、「経過措置」を設け、賃金請求権の消滅時効、賃金台帳などの記録保存期間、割増賃金未払いなどに係る付加金の請求期間は「当分の間3年」に短縮した。
適用に関しては、施行日以後に賃金支払日が到来する賃金請求権について新たな消滅時効期間とする。改正法施行5年経過後の状況を勘案し、必要な見直しを講じる「検討規定」を設けた。衆議院の附帯決議によると、施行後5年の経過を待たずに賃金台帳などの記録保存期間の延長が可能となるよう、中小企業における記録の電子データ化を支援し、記録保存に掛かる負担の軽減を図るよう求めた。
労働基準監督署は、賃金の未払いを発生させないよう、指導・監督を徹底するとともに、賃金未払いが発生した場合には是正指導を厳正に行うよう要請した。
一方、雇用保険法等改正案は、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置を企業に努力義務化。具体的には、①定年引上げ、②継続雇用制度の導入、③定年廃止、④労使で同意した上での雇用以外の措置(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度)の導入――のいずれかを講じる(3年4月1日施行)。
複数事業所就業者に関するセーフティネットの整備については、労災保険給付に当たり複数就業先の賃金に基づき給付基礎日額を算定する(公布後6月を超えない範囲で施行)。また、雇用保険制度における「高年齢雇用継続給付」については、令和7年度から給付を縮小する。