定額残業代の廃止に伴う企業の対応とは 椎名社会保険労務士事務所

~透明性と納得感ある賃金制度への見直し~

こんにちは、椎名社会保険労務士事務所です。
今回は、近年多くの企業で見直しが進んでいる「定額残業代制度の廃止」について取り上げます。

◆ なぜ定額残業代制度の見直しが必要なのか?

定額残業代(みなし残業)は、あらかじめ一定時間分の残業代を基本給とは別に支払う制度ですが、以下のような理由でトラブルが起こりやすい制度でもあります。

実際の残業時間と乖離していると未払い残業代と見なされる

説明不足により従業員の不信感を招く

労働基準監督署の是正指導対象になることがある

企業としては「計算の手間が省ける」「給与の予見性がある」などのメリットもあるものの、リスクと向き合いながら制度を維持するには限界もあるのが現実です。

◆ 定額残業代を廃止する際の対応ポイント

定額残業代を廃止するにあたっては、以下のような段階的対応が必要です。

① 社内の賃金設計の見直し

定額残業代を廃止すると、これまでの「○時間分の残業代込み給与」という仕組みは通用しなくなります。基本給と時間外手当を明確に区別し、以下のように整える必要があります。

基本給+手当(役職・通勤等)+残業代(実績に応じて計算)

残業単価の算出根拠を明確にする(割増賃金計算の基本)

② 就業規則の改定

定額残業代に関する記載を削除し、時間外労働に関する取り扱いを適切に記述する必要があります。特に以下の点は注意が必要です。

残業代の支払い基準

割増賃金の率と計算方法

36協定との整合性

※改定後は、労働基準監督署への届出もお忘れなく。

③ 労働条件通知書の修正

全従業員に対して、修正後の労働条件通知書(または雇用契約書)を交付し、署名をもらいましょう。ここでは以下の点を明示します。

基本給の内訳

残業代が別途支払われること

月給が変動する可能性(残業時間により)

④ 従業員への丁寧な説明

制度変更は従業員の生活に直結します。特に、以下の点を丁寧に説明することが重要です。

定額残業代制度をやめる理由(コンプライアンス・公正性)

今後は残業実績に応じた手当が支払われること

基本給が変わる場合、その根拠と影響

納得感のある説明が信頼関係の維持につながります。

◆ 廃止後の管理体制の強化も忘れずに

定額残業代を廃止した後は、労働時間の適正な管理がより重要になります。勤怠記録の整備、上長による残業の事前承認制など、運用面の見直しも併せて進めましょう。

◆ まとめ ~公正な制度が人材定着につながる~

定額残業代の廃止は、企業にとって一時的には手間と調整が必要ですが、公正で透明性のある賃金制度への第一歩です。
労働トラブルの防止、従業員の納得感の醸成、ひいては人材の定着にもつながります。

椎名社会保険労務士事務所では、定額残業代の廃止に伴う「就業規則改定」「労働条件通知書の作成」「従業員説明会のサポート」などを一貫してお手伝いしています。制度見直しをお考えの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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