こんにちは。
千葉県匝瑳市の椎名社会保険労務士事務所です。
企業の人件費設計や労働時間管理の一環として、「定額残業代制度(みなし残業)」を導入している企業も多いのではないでしょうか。しかし、導入や運用の仕方を誤ると、無効と判断されたり、過去にさかのぼって残業代を請求されたりするリスクがあります。
今回は、定額残業代制度の基本と、導入・運用時に注意すべきポイントを解説いたします。
定額残業代制度とは?
「定額残業代制度」とは、一定時間分の時間外労働に対して、あらかじめ給与に残業代を組み込んで支給する仕組みです。
たとえば、「月30時間分の時間外手当として、月額5万円を基本給とは別に支給する」というような形です。毎月の残業時間に関係なく一定額が支払われるため、給与計算が簡便になるというメリットもあります。
適正な制度設計がされていないと「無効」になる!
定額残業代制度は、以下のような法的要件を満たしていないと無効と判断されるおそれがあります。
✅ 1. 就業規則や労働契約書での明記
定額残業代制度を導入する際には、「基本給」と「固定残業代」を明確に区別し、労働条件通知書や雇用契約書、就業規則等に記載することが必要です。
例:基本給200,000円+固定残業代50,000円(30時間相当)
✅ 2. 割増賃金としての性格を持つこと
支払われる定額残業代は、実際の残業時間に対する割増賃金と対応していなければなりません。また、実際の残業時間が定額分を超えた場合は、超過分について追加で支払う必要があります。
✅ 3. 残業時間と金額の明確な対応関係
「◯時間分の残業代として◯円を支払う」という根拠のある設計でなければ、実際の割増率と見合わないと判断されるリスクがあります。
よくあるトラブル事例
「定額残業代を払っているから残業代は支払い不要」と誤解していた
実際の残業が月60時間に及んでいるのに、30時間分しか支払われていない
労働条件通知書に定額残業代の明記がなく、後に従業員から請求を受けた
営業手当や職務手当として定額残業代を払っていたが、性質が曖昧で無効とされた
トラブルを防ぐために、社労士ができるサポート
当事務所では、定額残業代制度の導入や見直しにあたり、以下のようなサポートを提供しています。
✅ 制度導入に向けた就業規則・労働条件通知書の整備
✅ 適正な時間数と金額の設計アドバイス
✅ 社内説明会の実施サポート
✅ 労働基準監督署からの是正勧告対応支援
最後に 〜「制度を守る」は「従業員を守る」〜
定額残業代制度は、上手に活用すれば人件費の見通しを立てやすくし、労務管理の効率化にもつながります。しかし、導入や運用を誤ると、企業の信用や財務に大きな影響を及ぼすこともあります。
制度を適切に運用することは、従業員の安心にもつながります。もし現在の制度に不安がある場合は、ぜひ一度、当事務所までご相談ください。
椎名社会保険労務士事務所では、企業の「人」と「組織」の課題を共に解決するパートナーとして、労務管理のアドバイスを提供しています。
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