従業員の指導・懲戒処分 ~公正な運用が信頼を築く鍵~ 椎名社会保険労務士事務所

企業運営において、従業員の行動が会社の秩序や業績に大きく影響することは言うまでもありません。しかし、就業規則違反や不適切な行動が見られた場合、どのように対応するか悩まれる経営者・管理職の方も多いのではないでしょうか。

本日は、「従業員の指導」と「懲戒処分」の違い、そしてその適切な運用方法について解説いたします。

■ 指導と懲戒処分の違いとは?
まずは言葉の定義を整理しましょう。

指導:主に就業態度や業務上の改善点を、注意・アドバイスの形で促す行為です。目的はあくまで「改善」。

懲戒処分:会社の秩序を乱す行為に対して、就業規則等に基づいて「制裁的に処分」するもの。戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇など、種類も段階もさまざまです。

つまり、「指導」は教育的、「懲戒」は制裁的という明確な性格の違いがあります。

■ 指導のポイント ~早めの声かけが信頼関係を守る~
従業員の問題行動を放置してしまうと、本人だけでなく周囲にも悪影響を与えることになります。重要なのは、問題が小さいうちに「指導」を行うことです。

具体的な指導のコツ:

行動を具体的に指摘する(例:「遅刻が3日連続続いています」)

感情ではなく事実に基づいて伝える

改善の期待を明確に伝える(例:「明日からは9時までに出社してくださいね」)

記録を残しておく(後の懲戒処分の根拠としても重要)

■ 懲戒処分の運用には慎重さが必要
懲戒処分を行う場合、就業規則の整備と事前の指導記録が極めて重要です。なぜなら、懲戒処分は従業員の権利を制限する行為であり、労働法上も厳格な運用が求められるからです。

懲戒処分での留意点:

就業規則に懲戒の種類・内容・手続が明記されていること

十分な事実確認・本人への弁明の機会が与えられていること

社内の処分基準が一貫していること(平等性)

必要に応じて外部の専門家(社労士等)へ相談

懲戒処分は最終手段と考え、まずは指導での改善努力が優先です。

■ まとめ ~組織の健全性は公正な対応から~
指導や懲戒処分は、決して「罰を与える」ことが目的ではありません。企業秩序を守り、職場環境の健全性を維持するための手段です。

そして、従業員にとっても「自分の行動がどう評価されているか」を知ることは成長の糧になります。公正で丁寧な対応が、会社と従業員の信頼関係を強固にするのです。

当事務所では、就業規則の見直しや懲戒処分の手続サポート、管理職研修なども行っております。問題の早期発見・円満な対応に向け、ぜひお気軽にご相談ください。
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