従業員へ「注意・指導書」を作るときのポイント 椎名社会保険労務士事務所

従業員の遅刻や欠勤、勤務態度、業務上のミス、指示に従わない行為などについて、会社として注意・指導を行う場面があります。

最初は口頭で注意していたものの、同じことが繰り返されると、「今後のために文書で指導した方がよいのではないか」という相談を受けることがあります。

注意・指導書を作成する目的は、従業員を責めたり、退職に追い込んだりすることではありません。

問題となっている事実を本人に伝え、会社が何を改善してほしいのかを明確にし、改善の機会を与えることが重要です。

① 感情ではなく「事実」を書く

注意・指導書では、「勤務態度が悪い」「やる気がない」「協調性がない」といった抽象的な表現だけで終わらせないことがポイントです。

例えば、

「○月○日、始業時刻午前8時30分に対して午前8時45分に出勤した」

「○月○日、上司から○○するよう指示したが、指示された業務を行わなかった」

など、いつ、どこで、何があったのかをできるだけ具体的に記載します。

本人と会社で事実認識に違いがある場合には、一方的に決めつけるのではなく、本人から事情を確認することも必要です。

② 「何が問題なのか」を明確にする

事実を書くだけでは、本人が「何を直せばよいのか」を理解できないことがあります。

会社のルールや就業規則、業務上の指示などに照らして、どのような点が問題であるのかを具体的に伝えます。

大切なのは、単に「注意します」とするのではなく、会社として求めている行動を明確にすることです。

③ 改善してほしい内容を書く

注意・指導書には、過去の問題だけでなく、今後どのように改善してほしいのかを記載します。

例えば、

「今後は始業時刻までに業務を開始できるよう出勤してください」

「業務上の指示について不明な点がある場合には、自己判断せず上司に確認してください」

など、本人が具体的に行動できる内容にすることが重要です。

④ 最初から強すぎる表現にしない

初めて文書で指導する場合には、いきなり「次回は懲戒処分とする」「改善しなければ解雇する」などと断定することには慎重さが必要です。

まずは「第1回指導書」として、事実確認、問題点、改善を求める事項を整理し、本人に改善の機会を与える方法が考えられます。

その後も同じ問題が繰り返される場合には、口頭指導→文書による指導→再指導というように、会社が継続して改善を求めてきた経過を残しておくことが重要になります。

⑤ 本人の言い分も確認する

会社側から見れば問題行動であっても、本人には本人なりの事情がある場合があります。

注意・指導書を渡して終わりではなく、面談を行い、

「この事実について間違いはありませんか」

「何か事情はありますか」

「今後改善するために会社として支援できることはありますか」

と確認することも大切です。

注意・指導は一方通行ではなく、本人の話を聞きながら行うことで、その後の改善につながる可能性があります。

⑥ 注意・指導と懲戒処分を混同しない

特に注意したいのが、「業務上の注意・指導」と「懲戒処分」を混同しないことです。

懲戒については、就業規則の定めや処分の相当性などを慎重に確認する必要があります。労働契約法第15条では、懲戒が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利濫用として無効になると定められています。

そのため、単なる指導書のつもりで作った文書が、内容によっては実質的な懲戒処分と受け取られることがないよう、文言には注意が必要です。

⑦ 「記録を残す」という視点も大切

従業員への指導では、「何月何日に、誰が、どのような内容を伝え、本人がどのように回答したのか」を記録しておくことが重要です。

問題が改善されれば、それでよいのです。

しかし、何度指導しても改善されない場合には、これまで会社がどのような指導を行い、改善の機会を与えてきたのかという経過が重要になります。

口頭注意だけで終わらせず、必要に応じて面談記録や注意・指導書を残しておくことをお勧めします。

注意・指導の目的は「改善」です

従業員に注意する場面では、どうしても「なぜ何度言っても分からないのか」という気持ちが出てしまうものです。

しかし、感情的に叱るだけでは、職場の人間関係を悪化させることもあります。

「何が問題だったのか」「会社は何を求めているのか」「いつまでに、どのように改善してほしいのか」

この3点を具体的に伝えることが、注意・指導の基本です。

また、指導した際には、改善できた部分について「良くなりましたね」と認めることも大切です。

「褒める・認める・感謝する」という姿勢を持ちながら、必要なことはきちんと指導する。その積み重ねが、従業員の成長と働きやすい職場づくりにつながるのではないでしょうか。

椎名社会保険労務士事務所では、従業員への注意・指導の進め方、注意・指導書の作成、就業規則の整備など、企業の労務管理についてご相談をお受けしています。