カスハラ対応は「従業員を守る」ことから始まります。 椎名社会保険労務士事務所

最近、企業からのご相談で増えているテーマの一つが、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対応です。

お客様からのご意見やご要望は、サービスを改善するための大切な声です。しかし、どのような要求であっても「お客様だから受け入れなければならない」ということではありません。

暴言、威圧的な言動、長時間の拘束、繰り返されるクレーム、土下座の要求、従業員個人への攻撃など、社会通念上許容される範囲を超えた言動については、会社として毅然と対応する必要があります。

「お客様は神様だから」は通用しない

接客業などでは、これまで「お客様の言うことにはできる限り応えなければならない」という考え方が強くありました。

そのため、従業員が理不尽な要求を受けても、

「とにかく謝っておいて」
「お客様を怒らせないように」
「もう少し我慢して対応して」

と、現場の従業員に対応を任せてしまうケースがあります。

しかし、このような対応を続けていると、従業員は「会社は自分を守ってくれない」と感じてしまいます。

カスハラによる精神的な負担が重なれば、仕事への意欲が低下するだけでなく、休職や退職につながることもあります。

人材不足が深刻化している現在、お客様を大切にすることと同じくらい、働いている従業員を大切にすることが重要です。

正当なクレームとカスハラを区別する

カスハラ対策で難しいのは、どこからがカスハラなのかという判断です。

商品やサービスに問題があれば、お客様から厳しいご意見をいただくこともあります。単に「厳しいことを言われた」というだけで、すべてがカスハラになるわけではありません。

大切なのは、要求内容に妥当性があるか、そして、その要求を実現するための言動や手段が社会通念上相当なものかという視点です。

例えば、ミスについて説明や謝罪を求めること自体は当然あり得ます。

一方で、

「責任者を今すぐ自宅まで謝りに来させろ」

「SNSに名前を出してやる」

「お前を辞めさせるまで許さない」

などと脅したり、長時間にわたって従業員を拘束したりする行為については、通常のクレームとは分けて考える必要があります。

従業員一人で対応させない仕組みを

カスハラ対策で特に重要なのが、現場の従業員を一人で抱え込ませないことです。

例えば、

「同じ説明を3回しても納得いただけない場合は上司に交代する」

「暴言が続いた場合は対応を終了する」

「一定時間を超えた場合は責任者に報告する」

といったルールを決めておくだけでも、現場の安心感は大きく変わります。

電話対応であれば、

「これ以上同じお話が続く場合には、電話を終了させていただきます」

と伝えたうえで対応を終了するなど、会社として一定の基準を設けておくことも考えられます。

重要なのは、従業員個人の判断だけに任せないことです。

「会社が守ってくれる」という安心感

私が研修などで大切にしているのが、「褒める・認める・感謝する」職場づくりです。

これはカスハラ対応にもつながっています。

お客様から厳しい言葉を受けた従業員に対して、

「あなたの対応が悪かったんじゃない?」

と最初から責任を追及するのではなく、

「大変だったね」

「対応してくれてありがとう」

「ここからは会社として対応します」

と声を掛けることが大切です。

この一言があるだけでも、従業員の安心感は違います。

もちろん、会社側に改善すべき点があれば、その後に事実関係を確認して改善していけばよいのです。

まずは従業員の話をしっかり聴く。
そして、一人で抱え込ませない。

これがカスハラ対応の第一歩だと思います。

カスハラ対応を「仕組み」にする

カスハラは、実際に問題が起きてから考えるのではなく、平時から準備しておくことが重要です。

会社として、

「どのような行為をカスハラと考えるのか」
「発生した場合、誰に報告するのか」
「どの段階で上司に交代するのか」
「対応を打ち切る基準は何か」
「警察や弁護士など外部機関へ相談する基準は何か」

といった事項を整理しておきましょう。

また、就業規則や社内規程、対応マニュアルを整備するだけでは十分ではありません。

実際の場面を想定した研修やロールプレイを行い、**「こんなときはどうするか」**を従業員と一緒に考えておくことが実践的な対策になります。

お客様も従業員も大切にできる会社へ

カスハラ対策というと、「お客様に厳しく対応するためのもの」と思われることがあります。

しかし、本来の目的はそれだけではありません。

正当なご意見には誠実に対応する。
一方で、行き過ぎた要求や暴言などからは従業員を守る。

この線引きを会社として明確にすることが、結果として質の高いサービスにつながるのではないでしょうか。

「何があってもお客様を優先する会社」ではなく、「お客様も従業員も大切にする会社」へ。

従業員が安心して働ける環境をつくることは、会社を守ることにもつながります。

椎名社会保険労務士事務所では、カスタマーハラスメント対策をはじめ、就業規則や社内規程の整備、相談窓口の体制づくり、管理職研修・社員研修などを通じて、安心して働ける職場づくりを支援しています。

カスハラ対応について「どこまで対応すればよいのか」「社内ルールをどのように作ればよいのか」とお悩みの企業様は、お気軽にご相談ください。

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